イスタンブールの韓国飯
トルコに行って、トルコ飯を食べずに何を食べたかというと、それは韓国飯である。イスタンブールには、「中東随一」と言う人もいる日本料理屋「優曇也」(うどんや)があり、ここもトライしたのだが、正直言っていまひとつだった。
それで、旧市街にある韓国料理店「ソウル(漢城)」へ。ここが期待以上の店だった。この店には、チャンポン麺があった。実は、このチャンポン麺、エジプト在住時足繁く通ったカイロの韓国料理店、「パクシー」の看板メニューで、よく食べたものだ。以来、好物となったが、韓国料理の中では、「韓国中華」というちょっと亜流のカテゴリーにあるため、お高くとまった韓国料理店のメニューにはないことも多く、日本の韓国料理店でもあまりお目にかかることがなかった。
上の写真ようなしろものだが、日本のチャンポン麺を猛烈に辛くしたようなものだが、細いうどんのような麺を使い、魚介のダシがきいているなかなか味わい深い料理。イスタンブールのこの店のチャンポン麺は、カイロ「パクシー」のものに劣らない、美味であった。この「ソウル」では、ほかにビビンバや、牛テールスープなども食べたがいずれも外れがなかった。盛りつけ、接客にも誠実さが感じられて、手を抜かない姿勢が現れていた。
それで、こちらが、「優曇也」のちらし寿司。悪くはないのだが、新鮮な魚介類があるトルコにしては、それを生かし切れていない気がした。板前さんはフィリピン人。「優曇也」は、5、6年前、新市街タクシム広場に面したこじまんまりとした店舗で営業をしていた時に何度が行ったことがある。今は、そこからそう遠くない「ポイントホテル」内に店舗を移し、「豊」(ゆたか)などに比べて比較的安価な店として、売り出し中のレストランではある。だが、他の料理も含めて、日本人からすると、日本料理へのこだわりがやや足りないような気がした。値段も「ソウル」のほうが2、3割ほど安い。
トルコとイランの飯
「イラン料理は空腹なときにはうまい、さほど空腹でないときには実にまずい」
こんな一文で始まる文章が、河出書房新社のイラン紹介本「アジア読本イラン」に収録されている。筆者は、イラン研究者の上岡弘二氏と吉枝聡子氏。実に的を得た指摘である。
この文章には、ロカンタ(食堂)に代表されるトルコ飯のうまさと多彩さも称賛されているが、今回の旅行でまさにそれを実感することになった。上の写真は、早朝テヘランからイスタンブールに入って、最初に食べた旧市街の変哲もないレストランで食べたケバブ。トラムのベヤジット駅に近い、イズミルとかいう店だったと思う。貴重なトルコでの一食だけに、本当は、日本飯か韓国飯でも食べたかったのだが、宿の近くの適当な店に飛び込んで、そこのおすすめとやらのミックス・ケバブを食べた。
これが、実に気がきいていた。鶏肉だの羊のミンチ肉のキョフテだの、骨付きラムだの、いろいろなケバブが盛りだくさん。なんというか、客に対する気遣いが、イランの外食とは比較にならない。トルコ滞在しょっぱなから、イランとトルコの落差をしみじみと感じてしまったのだった。外食のメニューに、トルコとイランの違いが如実に、現れているのでは、といろいろ考えされられた。
といいつつ、トルコではトルコ飯をあまり食べなかったのだが(やはり、日本式の白米がいいのです)、もう一軒、エーゲ海岸のトルコ第3の都市イズミルに近いエフェス遺跡に行った時に食べたキョフテ(上の写真)にも、これまた感動。遺跡の玄関となっている田舎町、セルチュクで、ふらっと入った店のだが、店内が非常にこぎれいで、店員の接客もすばらしい。顧客本位の姿勢が、にじみでているのだ。となれば、当然キョフテの味のほうもグッドである。もちろん、トルコのすべての外食店がそうだとは言えないだろうが、客の立場で料理を供するという、当たり前といえば当たり前の目線が、トルコの食堂にはあるような気がして、また、イランとの違いについて、考えされられた。
作家高野秀行氏来訪
辺境探検作家の高野秀行氏が、イランを訪れた。高野氏は、早稲田大学探検部の出身で、在学中にアフリカ・コンゴの幻の怪物探索のルポルタージュ「幻獣ムベンベを追え」でデビューし、その後も世界各地の探検にいそしんでいる方である。
今回は、週刊「SPA!」に連載中の「イスラム飲酒紀行」の取材という。知人の「世界屠畜紀行」作者の内澤旬子氏から紹介いただき、テヘランで初お目見えとなった。
「飲酒」が肝の取材ということだったので、「アルメニアン・クラブ」なるレストランにご案内した。このレストランは、持ち込んだ酒で料理が楽しめる、という、イランではまことありがたい店なのだ。
秘蔵のハイネケンビールと、オーリトラリアの赤ワインを持ち込んだ。ワインのほうは、偶然ながら、ラベルには、「シーラーズ(シラーズ)」(イラン南部シーラーズ原産のブドウ品種)とかかれていた。
店員の指示で、ビール缶とワインボトルはテーブルの下に。非イスラム教徒が飲むぶんには問題ないようだが、あくまで目立たぬよう、ということのようだ。
つまみ(オードブル)もなかなかしゃれていて、牛タンにチーズ、ポテトサラダ(イランでオリビエサラダという)。なかなかワインにあう。
「1年ほとんど酒を切らさない」自称「半アル中」の高野氏も、ビールとワイングラスを前に、満足げな表情。というか、もう目が座っているかも。