トルコとイランの飯

「イラン料理は空腹なときにはうまい、さほど空腹でないときには実にまずい」

こんな一文で始まる文章が、河出書房新社のイラン紹介本「アジア読本イラン」に収録されている。筆者は、イラン研究者の上岡弘二氏と吉枝聡子氏。実に的を得た指摘である。

この文章には、ロカンタ(食堂)に代表されるトルコ飯のうまさと多彩さも称賛されているが、今回の旅行でまさにそれを実感することになった。上の写真は、早朝テヘランからイスタンブールに入って、最初に食べた旧市街の変哲もないレストランで食べたケバブ。トラムのベヤジット駅に近い、イズミルとかいう店だったと思う。貴重なトルコでの一食だけに、本当は、日本飯か韓国飯でも食べたかったのだが、宿の近くの適当な店に飛び込んで、そこのおすすめとやらのミックス・ケバブを食べた。

これが、実に気がきいていた。鶏肉だの羊のミンチ肉のキョフテだの、骨付きラムだの、いろいろなケバブが盛りだくさん。なんというか、客に対する気遣いが、イランの外食とは比較にならない。トルコ滞在しょっぱなから、イランとトルコの落差をしみじみと感じてしまったのだった。外食のメニューに、トルコとイランの違いが如実に、現れているのでは、といろいろ考えされられた。


といいつつ、トルコではトルコ飯をあまり食べなかったのだが(やはり、日本式の白米がいいのです)、もう一軒、エーゲ海岸のトルコ第3の都市イズミルに近いエフェス遺跡に行った時に食べたキョフテ(上の写真)にも、これまた感動。遺跡の玄関となっている田舎町、セルチュクで、ふらっと入った店のだが、店内が非常にこぎれいで、店員の接客もすばらしい。顧客本位の姿勢が、にじみでているのだ。となれば、当然キョフテの味のほうもグッドである。もちろん、トルコのすべての外食店がそうだとは言えないだろうが、客の立場で料理を供するという、当たり前といえば当たり前の目線が、トルコの食堂にはあるような気がして、また、イランとの違いについて、考えされられた。