ハーフェズ占い
イランの街頭では、小鳥に自分の運勢を占ってもらうという小粋な占いがある。「ハーフェズ占い」。託宣は、イランの国民詩人ハーフェズ(1326頃−1389頃)の詩の一節だ。
「多くのイラン人は子供の頃にハーフェズの詩を暗唱する。それぞれの家には、イスラム教の聖典であるコーランがあるように、ハーフェズの詩集があると言われている。ハーフェズ占いという占いは、このハーフェズの詩集を開いて、そこに書いてある詩から運勢を占うものである。」(鈴木珠里「詩の国イラン」、月刊誌「アジアウェーブ」1998年11月号)
テヘラン北部タジュリーシュの繁華街をぶらついていると、その、小鳥を使ったハーフェズ占い師にでくわした。一回引いて2000リアル(20円)。それにしても、小鳥は器用に占いの紙を引く。
筆者のために小鳥が引いた紙にはハーフェズの詩の一節と、こんな解説が書いてあった。
「あなたは、数多くの恋愛遍歴を持つ思想家であり決断力のある人物だ。あなたはこのところ、自分がすべきこと、すべきではないことに迷っている。ハーフェズは言う。自分の道を進むことが成功の道だと」
エルサレムの穴蔵カフェ
先日、5年ぶりにエルサレム再訪を果たした。真っ先に行きたいと思ったのは、歴史の香りぷんぷん漂う旧市街かと思いきや、ユダヤ人側新市街のとあるカフェ。繁華街ベン・イェフダ通りからもそう遠くない。シャワルマやファラーフェルといったアラブ料理を「中東料理」と称していかにもイスラエルのオリジナル料理のようにしてしまうだけあり、イスラエル側でも、水タバコを出すカフェは少なくない。
ここがユニークなのは、客席の構造。よく「穴蔵」と呼んでいたが、窓のない蔵のような室内にキリムを敷き詰めてあり、ゴロンと横になって水タバコを吸うのが、いつしか至福の時間ということになってしまった。
第2次インティファーダのさなかの2001、2年前後。エルサレムでもパレスチナ過激派による「自爆テロ」が頻発していて、「こんな密閉空間で自爆されたら、ひとたまりもない」と、おそるおそる足を踏み入れていた。最近は、テロがほとんど起きていないとあって、他の客もかつてに比べて、心なしかリラックスしているようでもある。
ここは穴蔵以外に普通のイス席もあり、ビールはベルギービールも各種そろっていて、中東にあって欧州を感じられる場所でもあった。
手榴弾のモニュメント
イランの交差点などには、その町のシンボルをあしらったモニュメントが飾られていることは多い。イラクとの国境の街、イーラム州メヘランでは、なんと手榴弾のモニュメントが飾られていた。
メソポタミア平原の東の端にあるメヘランは、イラン革命直後、サダム・フセイン大統領率いるイラクの軍事侵攻を受け、数年間にわたってイラク軍に占領された。いわゆるイラン・イラク戦争の激戦地だったのだ。バグダッドからメヘランまでは、は起伏のない砂漠しかなく、防御が極めて難しい地形だ。
写真の男性たちがはいているボンタンズボンでもわかるように、住民の多くはクルド人。宗派は、クルド人の多数派イスラム教スンニ派ではなく、シーア派が多い。街は、かつて自衛隊が駐留したイラク南部ムサンナ県サマワを思わせるのんびりとした雰囲気だった。