日本とアラブのジャーナリスト対話(2)

【2007年2月8日開催の日本・アラブ・イスラム・ジャーナリスト会議の内容紹介】
第一部の冒頭発言したガバラ氏は、アラブ圏紙の過去の記事を紹介しながら、西洋の中東報道に対する疑義を示した。ムハンマド風刺画問題での西洋の報道ぶりは「(文明の)衝突を促しているとしか思えない」との見解を示した上で、欧米メディアは、「アラブとイスラムをひとまとめにすることで、対立を促しているとしか思えない」などと語った。一方で、河野衆院議長が外相時代に提唱した「イスラム世界との文明間対話」を「他の模範になるもの」と評価した。

続いて発言した池村氏は、マスメディアの海外特派員の役割は「誤解と偏見の警告」だとした上で、ハンチントンの「文明の衝突」論の二元論的な考え方は、「文化の多様性を否定することになり、(負の)影響は明白」だとした。

アビール氏は「他の文化、宗教を相互に学ぶことが、互いに傷つけあうことを避けることができる」とした上で、「イスラムは、寛容な社会である。理解と協力に裏打ちされたもの」であり、「アラブとイスラムの二つを混同したり、アラブ・イスラム=テロリストというイメージが広がっている」ことに懸念を示した。

アビール氏はさらに「(西側)メディアによってイスラム教徒=テロリストと決めつけられている。メディアで働く我々は、宗教とテロを結びつけてはならないし、テロと解放運動を区別しなければならない」と主張した。

ここでガバラ氏が、日本側参加者に「アラブに対する偏見があるのか」と質問。
これに対し池村氏は「記者は、どうしても今起きていることを優先する。欧米の力を借りて報じることは避けられない。(アラブ側には)非アラビストも読める形でどんどん発信してほしい」と語った。

出川氏は「イスラム教徒には自明のことでも、日本人には理解が難しいことがある。なぜ、イスラムの名でテロが起きるのか?イスラム法学者がテロを非難しないのか?こうした点でロジックに大きなギャップがあり、理解が難しいが、これを埋めていく努力が(日本のメディア側にも)必要だ。イスラム世界も、なぜこうしたことが起きるのか、という点で、メッセージを発する必要がある」と述べた。

イスラムの名のテロ」に関連して、ワリード氏は、「(「テロ」を行っているのは)イスラムを代表する人たちではない。過激派はイスラムを代表するものではない。イスラムの原則を読んで、判断してほしい」と訴えた。