ベイルート、ベイルート!

東京に暮らしていながら、最近続々と増えているアラブ文化関連イベントに足を運ぶのを最近さぼっていた。ということもあり、1月28日、渋谷のアップリンクで行われた「レバノンのポップ&クラシック」というイベントに行ってきた。

アップリンクのイベント案内

イベントは2部構成。第1部は、アラブの代表的な弦楽器「ウード」の国内第一人者、常味裕司氏、打楽器ダルブッカの立岩潤三氏によるアラブ音楽ミニコンサート。エジプトが生んだ偉大な作曲家、ムハンマド・アブドルワッハーブの「レバノンの夜」「ビント・エルバラド(田舎娘)」「アルジェリアの夜」などを演奏。恥ずかしながら常味さんの演奏をじっくり聴いたのは初めてだったが、アブデルワッハーブの名曲の情感を表現している秀逸な演奏と思った。立岩氏のダルブッカもなにやら不思議な音だった。
コンサート後半はベリーダンサーのスランさんが、常味、立岩コンビによるレバノンの歌姫フェイルーズの曲に合わせての音楽と踊り。曲は和訳すれば、「レバノンの風に吹かれて」といった曲。日本人のベリーダンスというと、腹がなかなかプルプル揺れないのが、不満の種(?)だったが、スランさんの腹は確かにプルプルゆれていた。
そして第2部は、東京大学大学院の建築学博士課程で学ぶレバノン人、マルワン・バスマジさんによる、レバノン音楽トーク。聞き手は、よろずエキゾ風物ライターのサラーム海上さん。
まず興味をひかれたのが、マルワンさんが「YOUTUBE」で見つけた、レバノンなどのビデオクリップの数々。
ダリダという歌手の「ヘルワ・ヤ・バラディ」(1970年代)、レバノンの60年代の歌を下敷きにした「4キャッツ」の「ドンヤー・●」、レバノン内戦中に流行したというジヤード・ラフバニの「ヘルワ・ディ」など。世界はどんどん動いていると実感。
メーンは、もちろん、フェイルーズ。ベイルート北郊のジュニエというキリスト教徒の首都といわれる町の近くで、レバノン内戦が始まった1975年生まれたというマルワンさんの音楽原体験はやはりフェイルーズといい、ロドリゴの「アランフェス協奏曲」をカバーしたフェイルーズの曲「ベイルート」あたりだという。ほかには、ワディーア・アッサーフィという男性歌手の「マッワール」といわれるアラブの伝統音楽なども幼き頃に出会った音楽だったという。

レバノン人が歌うレバノンの歌が好き」と言い切るマルワンさんだが、最近のナンシー・アジュラム、ハイファといったアイドル系歌手については、「レベルが低い。好きではない」と切って捨てていたのが、結構衝撃的だった。

最後には、マルワン氏がレバノンの大学で卒業論文で構想した、三大宗教の聖地・エルサレムでの3宗教共同墓地構想。高さ300メートルの縦型墓地を建てるという壮大な計画。本当は、これが一番話したかったこと? マルワン氏いわく、フェイルーズが歌ったことを具現化したということらしい。さすがに実現に向けたアクションを起こしているわけではないようだが、型破りな大志はやはり、アラブなのかなあ、と感じ入った。

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常味裕司氏HP