アラブ・ポップス音楽の今を解説

国際交流基金」が刊行する「遠近」(をちこち)という雑誌が、最新の6、7月号で、「知られざるアラビア世界」という特集を組んでいる。「アラブ」ではなく、「アラビア」なのは、巻頭対談に登場する片倉もとこ・国際日本文化研究センター所長の考えのようで、「もともとアラビア語遊牧民や西に住む人」という意味の「アラブ」より、「アラビア世界」のほうが、「よりニュートラル」との立場のようだ。

「遠近」公式HP

さて、特集で、カフェバグダッド第一弾にゲストとしておいでいただいた中町信孝氏(日本学術振興会特別研究員)が、アラブポップス音楽の現在を俯瞰する文章を寄せている。
中町氏は、近年のアラブポップスをめぐる動きの中で特筆すべき点として、

1アラブ圏内の地域主義の高まり
2欧米の文化主義への対抗
政治的主張の表明

の主に3点をあげる。1を物語る現象として、ペルシャ湾岸資本の衛星放送局の「躍進」に伴い、アラブ圏音楽文化の「再統合」が起きていると指摘。2については、レバノン人女性アイドル、ナンシー・アジュラムなど過激なセクシー・ビデオクリップの隆盛を「欧米から流入するより過激なビデオへの対抗策」ともみなせる、との見方を示す。3については、2000年秋以来のパレスチナの第二次インティファーダや、米同時テロ以降のアラブポップス界の政治志向に着目した。
中町氏は、この3点を見るに、「かつての『アラブ主義』が息を吹き返しているように見えてくる」と驚きをもって語る。