スーパースターの実像

【カーゼム・アッサーヘルという歌手6】
カーゼムは、その風貌の「イケメン」ぶりも、人気の理由であることは間違いない。だが、意外と、「イケてない男」を演じる歌も多い。その代表格が「アナ・ワ・ライラ」だろう。一方的片思いの女性に、あっけなく振られた男の独白。

私の熱烈な祈りは、あなたの目の中のミフラーブ(祭壇)で死んだ
旗は、絶望の風に降伏した
私の時間は、あなたの閉じられた門の前で干からびた
懇願は何も実らせなかった

といった具合。日本語にしてしまうとなんだが、アラビア語ならかなり詩的な表現のようだ。それにしても、どよーんと暗い絶望の歌だ。こういう歌詞が大ヒットを飛ばす、というところが、今ひとつ理解できない気もするが。

それにしても、カーゼム自身も、こうしたイケてない男という部分を背負っている、と唱えるのは、師岡カリーマさん。その辺の話は、6/12のイベントにて。確かに、実物のカーゼムは、スーパースターにありがちなごう慢さがまったくないように見える。あまり得意ではない英語でのインタビューを文句も言わず答えてくれたし、いろいろなポーズの写真撮影にもいやな顔もせず応じてくれた。その上、「スポーツは何かやるの?ピンポンは?」と、手振りを交えながら、気さくに話題を振ってくる、明らかに「いい人」である。

イラク人の妻と離婚した後、独身生活を謳歌しているようにも見えるが、そうでもない、と見るのは、師岡カリーマさん(詳しくはイベントで)。カーゼムの実像は、意外に「アナ・ワ・ライラ(私とライラ)」の「私」に近いのでは、との見方もあるのだ。