師岡カリーマさんの「生きたアラビア語」論

 日本アラブ協会が発行する季刊雑誌「アラブ」に、NHKテレビ「アラビア語会話」講師としても知られる師岡カリーマさんの連続エッセイ「アラブ人のこだわり」が連載されている。彼女初のエッセイ集「恋するアラブ人」(白水社)もここでの連載がもとになったものだ。
最新号の2005年春号の「言葉の境界線」と題したエッセイの中で、カリーマさんは、アラビアの共通語である「文語」の正則アラビア語が「アラブの団結と伝統存続のために無理矢理生かされている死語ではなく、生きたコミュニケーションの手段として復権しつつある」との見方を示している。
 さらに、この現象はカタールの「衛星テレビ局アル・ジャジーラの活躍に負うところが大きい」のだという。
アラブ世界を回っていると、各地域によるかなり差のあるアンミーヤ(口語)に戸惑うことは多い。確かにフォスハーなら、全アラブ共通だから、そうしたストレスも感じずにすむわけだ。
カリーマさんはさらに、会話語としてのフォスハーの弱点としてよく指摘される「誰にでも通じる言葉ではない」という点についても、「初めてアラブの街を訪れる外国人が使うようなシンプルな会話が、フォスハーでは『通じない』ということはないはずだ」と、説明している。
 フォスハー復権の動きといえば、イラクが生んだアラブ歌謡界のスーパーヒーロー、カーズィム・アッサーヒルの歌のかなりの部分がフォスハーであるということも、無関係ではないのかなあ。

ところで、この「春号」には、アラブ映画専門家で、先日開催されたリアル/アラブ映画祭の主催者メンバーの1人である、佐野光子さんが、4月に開催される「アラブ映画祭」のみどころなども紹介されている。
同号の表紙は、どうも、イエメンのデカ水タバコのようですね。