エジプト南部の薫り−−代々木上原「アラビアーナ」

【東京水タバコカフェシリーズ】
アラビアーナ(Arabiana)(東京都渋谷区西原3−1−7 電話03-3468-7891)

「下北沢アラブ街」と命名した以上、早めに実地踏破をしなければ、と早速いってみた。代々木上原駅北口からすぐ。白を基調にした瀟洒な感じの店である。一階はテイクアウト用のデリになっており、2階がレストランになっている。ドリンク付で千円以下と手ごろなランチが、「チキン・シャワルマ」「クスクス」「パスタ」「カレー」など数種類。
クスクスを頼んだが、クスクスにかけるスープは、これぞ、エジプトといった感じのオクラのトマト煮だった。味は悪くない。 聞いてみると、マスターのアリ・アブデルハカムさんは、エジプト南部アスワン出身。エジプト南部出身者は、俗に「サイーディ」と呼ばれ、しばしばエジプト喜劇映画の主役だが、アリさんも、サイーディらしい、実直かつ明るい人だった。ちなみに、エジプトのカフェのウェイターは、サイーディが多い、と思う。彼らは、ヨルダン・アンマンあたりでも活躍していて、遠くヨルダンでも、まるでエジプトにいる気分になることがある。

店は、今年9月に開店したばかり。前日のブログで紹介した東北沢のデリは、アリさんの奥さんが切り盛りしているのだという。アリさん夫婦は、下北アラブ化に欠かせない、ということになりそうだ。 それで、肝心の水タバコ。一回700円。アリさん自ら準備してくれる。味は悪くない。ドリンクの種類も、カルカデ、ミントティー、アラビアコーヒー、メニューにはないが、タマールヒンディもあるという。アルコールも、モロッコワイン、ラク、トルコのエフェスビールと品揃えはなかなかだ。カフェバグダッドのキラー・ドリンク「ヘルバ」はさすがになかった。さりげなくかかる音楽は、エジプトの伝説的歌姫ウンム・クルスーム。エジプトのカフェではあれだけ耳にするのに、日本のアラブ料理店などでクルスームがかかっているのを聞いたのは、初めてのような気がする。アリさんは、ウンム・クルスームのほか、好きな歌手としてアムル・ディアブをあげた。数年前、アラブ世界で一世を風靡したレバノン人女性アイドル歌手「ナンシー・アジュラムはどう?」と聞いたら、「知らない」といわれた。
一階のデリには、ホンモス、ババガヌーシュ、フール、ムサカ、マカローナなど、エジプト料理の肝がずらり。厨房を担当する男性は、シリア・ダマスカスのヤルムーク難民キャンプ出身のパレスチナ人。自民党本部で料理を作ったこともあるらしく(イフタール?)、安倍晋三とのツーショット写真が飾られていた。