サダムの時代 Saddam's age

7月1日発売の「週刊文春」(7月8日号)で、ジャーナリスト立花隆氏が、連載中の「私の読書日記」で、カフェ バグダッド関係者が関わったイラク本「サダムの時代」を紹介している。この本の主人公の一人、反体制作家のシャウキー・カリーム氏(写真)とは、バグダッドで会った。イラク新政府の首相に就任したイヤード・アラウィ氏がトップの反フセイン派組織「イラク国民合意」の本部ビルで、たまたま知り合ったのだ。自身の投獄・拷問体験を、ある時はユーモアを交えながら話すシャウキー氏に、イラク人の計り知れない懐の深さを感じたものだ。彼は今、バグダッドで、獄中などで書きためた小説の出版に奔走している。成功を祈りたい。

ちなみに、以下が立花氏の評の全文

 ×月×日
 日本のイラク戦争ものでは、相原清・久保健一・柳沢亨之『サダムの時代』
中央公論新社、一八〇〇円+税)がいい。バース党の幹部と、投獄された反体
制作家と、クルド人女性兵士と、年齢も社会的立場も全く異なる三人の人物の個
人史を丹念にたどり、フセイン政権誕生以前(五〇年代―七〇年代)、イラン・
イラク戦争の時代(八〇年代)、湾岸戦争(九一年)、経済制裁の時代(九〇年
代)、イラク戦争直前と直後、それぞれの時代に、三人がどのような人生を送っ
ていたかを重ね合わせていくという手法が見事に効を奏して、イラクという国の
現代史が重層的に見えてくる。イラクを理解するために、なまじの解説書、歴史
書を読むより、この本を一冊読むほうがはるかに役に立つ。